被相続人(となる方)の死亡に伴い、関連する様々な手続きが必要になります。各種手続きや書類の提出などは主に代表相続人の方が行うケースが一般的ですが、遺言や調停に関する手続きは煩雑であり法律の知識が必要となります。また、遺産分割協議で合意に達することができず、トラブルが発生するようなケースでは、すでに弁護士が介入すべき段階に入っているといえます。早い段階から専門家に相談することで、無用なトラブルを未然に防ぎ、遺産相続をスムーズに進めることができるのです。
死亡時または失踪宣言
死亡後は医師・病院が作成した死亡届を受け取り、市町村役場に提出します。また失踪(普通失踪)の場合は、失踪から7年以上経過してから家庭裁判所に「失踪宣言の審判申立書」を提出。調査・公示勧告を経て、6ヶ月後に失踪宣言が確定します。さらに失踪届を市町村役場に提出することで法的に死亡と同じ扱いになり、遺産相続が可能に。また事故や災害などで行方不明になる「危難失踪」の場合は、1年以上経過した後に「失踪宣言の審判申立書」を提出でき、提出後の2ヶ月後に失踪宣言が確定します。
遺言書がある場合
変造や偽造の恐れがない公正証書遺言以外の2つの遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)の場合は、発見者か保管者が「遺言書検認の家事審判申立書」を裁判所に提出します。検認とは家庭裁判所が相続人を始めとする利害関係者の立会いのもとで、遺言書を開封し内容を確認すること。相続のトラブルを未然に防ぐためのプロセスといえるでしょう。確認後、裁判所が「検認証書」を作成します。なお、封印してある遺言書を検認なしで開封すると5万円以下の過料に処せられます。しかし、開封しても遺言書の内容自体は有効です。
遺産分割協議書の作成
法定相続人同士による話し合い(遺産分割協議)で合意した内容に沿って遺産分割協議書を作成します。相続人全員が合意すれば、法定相続分に従う必要はありません。内容は自由に決定することができます。遺産分割協議書の書式は決まっていませんが、遺産の内容をできるだけ正確・具体的に記入する必要があります。不動産に関しては登記簿謄本で正しい不動産表示を行います。分割協議書は、相続人の人数分を作成して各人が1通づつ保管します。また遺産分割協議書には相続人全員の実印による署名捺印が必要となります。
遺産分割協議が不合意の場合
遺産分割協議で相続人全員が合意に達しなかった場合は、弁護士を代理人として再度、法定相続分を基本とする分割協議を行います。弁護士を代理人とした分割協議でも不合意の場合は、家庭裁判所に遺産分割調停申立書を提出。調停による解決を目指します。この遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員が、相続人同士の意見や主張を聞き、合意を目指す制度です。
遺産分割調停でも不合意の場合
遺産分割調停を通じても合意できなかった場合は、家庭裁判所の審判に委ねます。この場合、家庭裁判所に「遺産分割審判申立書」を提出します。相続人同士の協議は行わず、家庭裁判所が公平に判断をして審判を下します。この審判での決定は、法的な強制力があり、仮に相続人全員が納得できなくても従わなければなりません。また調停を経てからでなければ審判に移行することはできません。
遺産分割
決定した内容をもとに遺産を分配します。銀行などの金融機関へは必要書類を持って払い戻しを行います。不動産は相続登記や売却の準備をします。また、相続した分の相続税の計算をする必要があります。
相続税の申告及び納付手続き
相続人は、その相続の開始があったことを知った翌日から10カ月以内に、税務署に申告書を提出して納税する義務があります。なお「相続の開始を知った」というのは、被相続人が死亡した日ではなく、相続人が被相続人の死亡を知った日のことです。また相続税の納付は、原則として金銭での一括納付です。しかし、困難な場合には、一定の条件を満たしている場合に限り、延納や物納による納付の方法もあるので、利用したい方は弁護士などの専門家にご相談ください。